【本紹介】切れない糸
おはようございます。今回は、坂木司さんの作品「切れない糸」を読了したので紹介します。
人の死なない、知識にもなるミステリー小説
総合おすすめ度
おもしろさ
共感度
世界観
読みやすさ
学び
この作品を選んだ理由
坂木司さんといえば「和菓子のアン」のイメージが強く、ほかの作品を読んだことがないなということで、ほかの作品を読むことにしました。
「和菓子のアン」以外にシリーズものがあるの、初めて知りました。
そちらもいつか読んでみたいです(*´ω`*)
こんな人におすすめ
登場人物
新井和也(アライカズヤ)
アライクリーニング店の息子。
大学卒業を控えており、極度の寒がり。
昔から困った人や動物が目の前に現れる体質を持つ。
沢田直之(サワダナオユキ)
大学の友人の一人。
鋭い洞察力で和也のクリーニング店での謎を解く。
茂田鉄二(しげたてつじ)
通称シゲさん。年齢不詳。
和也が生まれる前からアライクリーニング店で働いている謎の人物。
あらすじ
主人公はクリーニング店の息子でとても寒がり。
そして、なぜか助けのいる生き物が現れる。
主人公の新井和也はこの特殊性質に困りつつ、次々と救っていく優しい性格をしている。
そんな和也は父が急逝したことがきっかけで、アライクリーニング店を継ぐことになった。
クリーニングのことについて素人の新井は父の代から働いているシゲさんや松竹梅トリオに仕事を教えてもらう。
そんな中、集荷作業中の衣類について次々と衣類についての謎が生まれる。
喫茶店ロッキーで働く友達の沢田直之と一緒に謎を解くことで、和也はクリーニング屋という仕事の奥深さを知り成長していく物語。
人の死なない連続短編ミステリー小説。
感想
主人公の特殊体質
主人公である新井和也の前には困った動物や人が現れ、去っていってしまいます。
その動物を無視することもできる・・・が、決まってその日の飯が不味くなってしまうことを知っている和也は放っておくことができない性格で、いつのまにか「来るもの拒まず、去る者追わず」の精神で助けてしまいます。
そんなある日、父が急逝してしまい、和也はこれを機に店を手伝うことを決断します。
大学を卒業して間もない和也は、社会についても店の仕事についてもまだまだ未熟。
周りにいる、母、松竹梅トリオ、父の代からいるシゲさん、そして、商店街や近所のお客さんにもまれて成長していく姿を一緒に体験できる物語です。
クリーニングに出す服で・・・
クリーニングに出す服を見ることで、その人の生活や性格、家族構成などが見えてきてしまう。
そんな言葉が書いてあって驚きました。
これまでそんな風に考えてクリーニングに出したことがなかったからです。
「服をきれいにしてくれるお店」としか認識がなかったので学生の頃に制服を母がクリーニングに出していた時など「あぁ、この母親の娘は○○中学校(もしくは○○高校)かぁーって思われていたのでしょうか?w
しかも、中学の時にペンキで制服を汚してしまっているので「鈍い子」って思われていそうです(笑)
しかも○○高校という場合で考えても、偏差値を知られてしまっていますねw
和也も制服やドレスなどを集荷することもあると思うので、そういう性格も手に取るように分かると思うと恥ずかしいですね。
このように個人情報を入手しやすい職業だからこその謎が、和也の身に降り注ぎます。
沢田直之
沢田直之は大学時代の和也の友達で、同じ商店街の喫茶店ロッキーで働いています。
沢田は和也の話から次々と謎についての答えを教えてくれる存在であり、和也がワトソンだとすれば沢田はホームズ的な存在だと、解説でも書かれています。
この解説を見て「なるほど!」と得心しました。
確かにホームズって服のちょっとした汚れなどで謎を解いて見せますものね!
沢田の少し鈍い和也を優しい物腰で支えている感じが私はとても好きです。
専門職×ミステリー
この物語は短編で続いていくスタイルのなので「和菓子のアン」を彷彿をさせます。
「和菓子のアン」も専門職×ミステリーの要素がある作品なので、専門職について知りたい人も、そうでない人も楽しめる物語になっています。
人の死なないミステリーなので、人が死ぬのが苦手な人も安心して読むことができます。
しかも、日常的な豆知識としても使えるので、ここで得た知識はぜひ日常生活に役立てていきたいですね。
解説にも書かれていた通り、クリーニング後のビニールはちゃんと外そうと思います!
読書で、日常生活で必要なことも教えてくれるのもありがたいですよね。
心に響いた言葉
同じ風景でも
みなさんにとって「東京」ってどんな場所ですか?
私の中では「一生住む場所ではない」と思っています。
その場で育って、住んでいる方からすれば「は?」と思うかもしれないですが、この作中で言っているように「期間限定の夢の国」ですね。
だから、「東京」といったらこれ!「東京」の人はおしゃれだという風に思い込んでいるところがあるので、この文章を読んでハッとさせられました。
自分の思考を押し付けないように気を付けたいです。
作中で和也は大学を卒業したら実家で仕事をすることになりました。
そんな中、大学生活をしていくうちに就職先がどんどん決まっていく友達に嫉妬する和也。
そんな和也を見て沢田は、
「初めての経験にちょっと舞い上がっているだけの、ただのダチだ。そして俺たちは違う経験をしつつある、ただのあいつらのダチだ。それを色眼鏡で見んなよ」
と、たしなめます。
私も高校を卒業して早く就職したので、すっごく和也の気持ちがわかるだけに、そうやって思えなかった私はバカだったなーと反省しました。
冷静に、なおかつ客観的に物事を見られるようになりたいです。
あとがき
社会人になる人に読んでほしい物語でもあります。
これまでクリーニング屋さんについて考えたこともなかった視点で知ることができて、新しい知識を得ることができました。
ってことで今回は坂木司さんの作品「切れない糸」でした。
選書の参考になれたらうれしいです。
最後に坂木司さんの他作品と、読書初心者向けの本を紹介しています。ぜひ覗いてみてください
それでは!
Audible
「切れない糸」はAudibleでも楽しむことができます。
少しの隙間時間でも聴くことで読書ができるのでおすすめです!
ナレーターは声優の西山宏太朗さんがつとめています。
聞きやすく、優しい声が作品にピッタリです!
他作品紹介
坂木司他作品
和菓子のアン
動物園の森